srk33’s blog

主に音楽について。

015 Vision of disorderについて。

 

 

 


Vision Of Disorder - Choke, Element and Imprint (Live)

 

 

ここまでリアルに負のエネルギー(特に怒り)が真っ直ぐ刺さるバンドはいない。

 

 

↑は、活動再開してからのライブDVD(2006年)の冒頭で、それぞれ1stEP「Still」、1stアルバム「Vision of disorder」、2ndアルバム「Imprint」からの代表曲。

 

曲自体は全部90年代後半のものなんだけど、今でも有無を言わさぬかっこよさ。

 

怒りと絶望が喉に焼き付いているようなボーカル、展開やテンポチェンジによる混沌が渦を巻く音像、そしてこの強靭なエナジー

 

間違いなく、当時ニュースクールハードコアと呼ばれていたシーンにおける、90年代後半を代表する孤高のバンドと言える。

 

1stアルバムまでは、まだ型にハマりつつも、その中で飛びぬけたセンスを発揮してた感じなんだけど、衝動に任せて短期間で作ったという2ndアルバム「Imprint」は、冒頭からほんとに凄まじかった。

 


What You Are

 

1stアルバムが割とすっきりとしたミックスだった事の反動らしいが、それぞれ暴発してる音を何とかギリギリ纏めたような、まるで地鳴りのようなデイヴ・サーディーによる圧殺不可避ミックス(エクストリームなロックのミックスをやっているエンジニアに是非一度は聞いてもらいたい)に、

 

ティム(ボーカル)の振り幅の大きい不安定さがそのまま音に変換されたようで、もうこの一曲だけで、狭義的な意味でのハードコアだのメタルだのっていう一つのジャンルに収まってる音ではない。

 

一番、怒りと憎しみのエネルギーに満ちた一枚だ。これが延々とラストまで続くのだから。

 

当時19歳だった私にとって、この衝撃は大きかった。

 

このアルバムのおかげで、直後に突如現れて世の中的には全てを掻っ攫っていったSlipknotという嵐は大して喰らわなかった。Wait and bleedは好きだけど。

(VODのリアルガチ路線から比べるとエンタメナイズされ過ぎてたし、それ以前にデスメタルが好きで通過後だったせいもあって、そこまで音楽的にも斬新さを感じなかったのも大きいが)

 

彼等のパッションとエナジーが沸騰し、己に刃を突き立て、それを受け流さず跳ね返し続けていた軌跡の頂点が2ndなら、

3rdの「From Bliss To Devastation」(再録多数の「For The Bleeders」は2.5rdという認識)は、

張り詰め過ぎて意識が飛んだ瞬間にその刃が突き刺さり、己の中の巨大な闇を知り、その真っ暗な空間に放り出されたような感じ。

 

1stEP収録の代表曲(だらけやな)D.T.Oからの一節

「I'll never give up my pride
 And I'll never surrender my hate」

これを実直に貫き通し続け、湧き続ける憎しみに抗い、眉間に皺をよせ続けたのが2ndまでで、

3rdでは、その憎しみや、憎しみに屈してしまう事の人間らしさを受け入れ、口元だけ微笑んだようにも感じる。

 

正に だって人間だもの。の境地。

 

 

中でも↓の二曲あたりが、3rdで一番広がった部分。

 


Sunshine

 


Pretty Hate

 

それまでの雰囲気の曲がないわけじゃないし、しかしながらアルバムタイトルとジャケやサウンド、歌詞が示した世界観(タイトル曲も凄くいい)が、これまでにない浮遊感を伴って、当時21歳だった私の中にどこまでも浸透してきたのである。

 

それまでの激しさとは違った意味で、より闇が深く、且つ音楽的に自由な一枚で、表現力が開花し、それまでバキバキだったグルーヴも、まるでティム以外全員メンバーチェンジしたかのように、後ノリの円を描きだした。

 

相当、賛否はあったと思う。特に従来からの「ハードコアバンドとしてのVOD」のファンからは。

 

私としては、結果的に、一番聞いたアルバムとなった。

 

 

残念なのが、再結成以降のセットリストに、この3rdからの曲が入ってない(ほぼ?全く?)っぽい事。

 

異質過ぎて並べられないなら、別名義でこの路線もやってくれないか?と思う。それくらい、3rdの音楽性は高いし、無かった事にしてしまうのはあまりに勿体ない。 

 

 

話しは2ndに戻るが、思い返せば3rdへの予兆はあった。各曲の部分的に、そしてラストのJada bloomだ。

 


Jada Bloom

 

超名曲。壮絶すぎるアルバムの最後にこれはズルい。

 

 

 

…そして、この美しい終わりの余韻に浸る間もなく突然「ぱるるぱんぱん~」とふざけた気の抜けた歌で空気ぶち壊してくれた日本版ボーナストラックの「Soul craft」(Bad brainsのカバー)はとても罪深い(いいカバーだけど!)んだけど、

ゴリッゴリのハードコアシーンから出てきたVODがカバーしてたのがミクスチャーのパイオニアっていうのも、何とも感慨深いものがあるし、良い意味でジャンルに捉われない価値観の持主たちだからこそ3rdも生まれた…というところにも繋がる。

 

 

まぁ何せ名曲の多いバンドなので、どこか刺さった方は、要検索で。

 

 

動画紹介した以外の曲だと、1stEPからはD.T.O、1stアルバムからはSuffer、2ndからはColor blindとかBy the river(Panteraのフィルが客演!絶叫合戦と、フィル独特の低音語りが不穏で展開もかっこいい)、

3rdからは冒頭曲Living to dieとかタイトル曲のFrom Bliss To Devastationとかが、特に個人的なオススメ。

(勿論Southboundもいいが、PVは曲の大切な流れを損なってて良さが台無しになってるので、是非フルコーラスで聴けるものを探して頂きたい)

 

 

 

 ってか、3rdより前のオススメはは2006年の「Dead in NY」でほぼ済みますね。


Vision Of Disorder 01 Live In New York